投稿

ちょっと工夫したマレット指の手術

いつもご覧いただきありがとうございます。 今日の症例は、ちょっとマレット指の固定方法を提示してみます。 「突き指」と思って整形外科を受診されて「指先の骨が骨折していますよ」と言われた方もいるかと思います。骨折がある場合は手術治療の方が意外かと思われる方もいるかもしれませんが、安定した成績が得られやすいです。 通常は、私も愛用しているextended block pinによる手術(いわゆる石黒法)を基本的に行っております。このような指先の骨折の場合は、 このワイヤー2本で挟み込むように固定します。術後4週間ぐらいの固定とわずかなワイヤー2本で簡便にまとまるため、患者さんの指にも優しい手術です。 最初に考えた石黒先生はアイデアが秀逸で、尊敬している先輩のお一人です。 ところが先日、きた患者さんは、ちょっと異なるタイプの骨折でした。 ピンぼけですが、はがれている薄い骨片です。 こんな時には、道具が間に合う必要もあるのですが、小さな金属フックを使って引き寄せて固定する手術となります。 この術式で手術を終えると外固定が不要での生活ができますので、なかなか便利かと思います。 テクニック的には前者の石黒法が普遍的なもの(一般的な整形外科の先生方ならば習得されていることが多い術式)ですが、こんな方法も必要になったりします。 けがをされた方も骨折のレントゲン写真をみて、術式を選べるわけではないのですが、どうぞまずは信頼されている整形外科の先生にご相談いただければと思います。

足の学会での症例報告発表 ~腓骨筋腱脱臼の手術治療~

イメージ
以前発表した 腓骨筋腱脱臼の手術治療のポスター発表です。 一般的には、足関節の捻挫だと思っていたら、この症例のようなことが発生する場合もあります。 この病態を知っていれば、鑑別診断として診察でも注意するのですが、 診察の状況によっては見逃される場合もありますので 、 疼痛が続くようでしたら、再度症状に対してご相談してほしいと思います。 学会発表にしたのは、手術の方法を工夫させていただいたからです。 腓骨筋腱の滑走床を作り直すために、腓骨筋腱溝を掘削形成してから同部が癒着しないように骨膜で滑走床を作り直してから、腓骨筋腱を整復、制動しています。 肘の肘部管症候群の亜脱臼の手術の一つに骨溝形成術がございますので、 それの応用編です。   コツの形態が低形成でもあったため、一工夫させていただきました。結果も伴っていて、患者さんにご満足いただけております。   特に症例2の女性は、食品関係の仕事でしゃがんだり、立ったりとが頻回でお忙しく、仕事を辞めようかと悩まれてもおりました。 「また仕事できるようになりました」と言われてほっとした思い出がよみがえります。  今後も続く患者さんからのご相談に、一緒に良い治療を考え、提案させていただければと思います。  手肘の手術以外にも、多くの先輩・同僚との縁で患者さんにお力になれるものがまだまだ私の中にもありそうです。   

人工指関節置換術 5年経過しました

イメージ
  久しぶりにfollowの外来でお会いできた患者さんです。当時、関節リウマチのため、手指が尺側偏位されていて外観が気になっていたとのことで手術をご希望されました。 MP関節に人工関節を挿入しています。シリコン製のインプラントなので軟部バランスで制御していくのですが、 この方は術後5年を経過しています。 外観も保たれているので、患者さんの満足度は高いようです。 外観はこんな感じが維持できています。 動きなどはスムーズに使っていただけています。 バランスに注意すれば患者さんの満足度の高い手術です。すべての先生が執刀できるわけではありませんが、手術後のイメージの参考になれば幸いです。

今日の症例から ~ ばね指の関節鏡下腱鞘切開術 ~

イメージ
今回は、ばね指(腱鞘炎)の手術症例についてです。 ばね指の手術をさせていただく場合、患者さんとご相談しながらですが、3cmぐらいの横皮膚切開で手術をさせていただくことも多いのですが、 今回は関節鏡下の腱鞘切開術 となりました。 症状としては中等度で関節拘縮はなく、他動での指伸展も保たれ、深浅指屈筋腱の癒着も手術前にないことが明らかな患者さん でした。 この場合は、シンプルに指の屈筋腱の通り道(これを腱鞘といいます) を切って開放するだけでスムーズな指の動きが回復する可能性が高いです。 そのため、 前述の条件が整っていて、手指を使う方で少しでも早く水を使いたい方 には、手術の選択として提案させていただいております。 この傷で手術後1週間です。実際には5日目から水を使うことを許可しています。 手術で皮膚切開をすると、傷からの感染予防のため、10日前後での抜糸をしますのでそれまでは水を使うことは控えます。 この数日間は患者さんにとって大きな差ですね。 小さい分だけ局所腫脹が強くてイメージよりも痛かったなどもありうるのですが 、実際には3日ぐらいで痛みは減衰します。 もちろん、他院でも行うように皮膚切開しても同じですが 、 関節鏡やエコーガイド下この類の手術はシンプルに腱鞘だけをきるので、腱の癒着や周辺滑膜、肥厚した腱鞘の処置などはできません。 ですので、軽症例にお勧めしています。 手術を好きな方はいないので軽症の方は注射の処置などもよい適応ですが、この手の手術自体は傷の小ささからも体への侵襲は少ないのも事実です。準備などの方が大変なのと、元来3cm程度でできる手術ではありますし、全国的に普及している程ではないのですが、当院ではこのような処置も選択可能ですので、ご用命があればご相談いただければと思います。  整形外科とくに上肢の関節鏡手術は日進月歩です。整形外科一般医としては必須手技とは言えませんが、修行時代の小生に多くのヒントや見本手術、叱咤、激励いただいた大学諸先輩方にいまさらながら感謝しております。

本日の症例から  ~変形性指関節症(へバーデン結節)に対する手術後~

イメージ
  今回は、以前手術をさせていただいた変形性指関節症(いわゆるへバーデン結節)の患者さんの関節固定術後6か月のお写真を提示します。 つまみ動作が回復して指先の力が入っている(爪の周囲の皮膚が白くなるぐらい力が入っていますね)のがわかります。 中指と示指を手術していますので、その2本を試しています。つまむ動作はこの2本と親指の仕事ですので大切ですね。 外観は大きく変わりません。右だけ手術させていただいています。掌に傷があるのは、手根管症候群を小生がさせていただきました。当時も手指を多く使う方でした(介護職員の方)ので、しびれていたため手術に踏み切ったとのことです。    皆さん手術をされる必要ばかりではないかと思います。しかしながら、患者さんからうかがうと、まだまだ、「もう年だから仕方ない」「使うときだけ痛いのなら我慢したらよいのでは」など、実際にここまでの可能性があることを知らない、医療関係者や周辺の方々から言われてあきらめている方も多いと思います。  突然、治療を選択するのも大変ですが、何も知らないままいるのも知る権利、選ぶ権利が損なわれているのと同じでもあります。  正確な診断、適切な治療を患者さんと一緒に選択していきたいと思っております。  これらの疾患は幸い、 患者さんも私も慌てる必要はないはずですから、 手外科専門医でもありますので、すこしづつ本当のことを知っていただければと思います。

日本手外科学会での発表動画 ~母指CM関節症~

 今年の日本手外科学会(4月20~21日)では、幸い、演題が二つ採用いただきました。 コロナ禍であったため、本格的な対面での学会は久しぶりとなりましたので、頑張って二つ演題をエントリーしたところうまく採用されました。 今日はその一つの動画を掲載します。 7 5歳以上の独居生活の患者さんにさせていただいた母指CM関節症の1年以上経過した方々の手術成績です。 細かなデータ主体の発表ですが、 手の機能が改善しています。 ということになります。 私自身もいくつかの手術方法を患者さんとご相談しながらお勧めし、手術をさせていただいております。 今回のような独居生活の方々は 「早く手を痛みなく使いたい」 と思う一方、 「もう年だからあきらめようか」 と悩まれていた方々です。 母指CM関節症なので手外科専門医からすると、手術内容も色々ありますし、求めるgoalによっては、固定術など他の術式の方が良い印象もあります。 患者さんが選ぶこと自体が大変だとは思いますが、患者さんに選択枝があることが最も大切なことだと思います。

ちょっと珍しい爪下の腫瘍(グロームス腫瘍)

イメージ
  先日、久しぶりの症例がありました。実は5年ほど前に私が診断させていただき、経過観察をしてもらっていた腫瘍です。 指先がとくに痛いとのことでして、外観はこんな感じです。 画面の爪で右下が紫色にみえるようでしたら、それが腫瘍なのです。 グロームス腫瘍を思わせる典型的な外観像でした。 指先は動脈から静脈へと毛細血管網を形成して変化するのですが、その部位にあるグロムス細胞が異常増殖して起きる腫瘍です。 良性なことが多いのですが、まれに多房性に発生する方もいますので精査してからの手術が安心です。 手術の実際です。同部にきれいな腫瘍が露呈しました。これらを愛護的に摘出して爪床を修復して終了します。同部にあると爪甲との間にはさまって異常な痛みを訴える方も多いです。 この病態を知らなく、また、外観にはあまり目立った変化が出ていない場合は気づいてもらえない方もいらっしゃいます。 以前お会いした別の方では痛みの訴え強すぎるものの、診断してもらえず。逆に、不安神経症の疑いで心療内科に紹介状を書かれてしまったという残念なお話しもあります。 早期発見はそのあとの患者さんの生活が自ら選択できる上では、重要なポイントです。この方も自分のペースで経過観察されて、予定手術で生活への影響を最小限にされています。 細かい話になっておりますが、痛みがとれて喜んでいただけましたので、ブログにものせさせていただきました。