一般的な腱鞘炎(ばね指)の治療方針について

 

  手指の腱鞘炎の特徴と症状について

腱鞘炎とは、腱と腱鞘の間に炎症が起きる病気です。腱は腱鞘の中を通って指を曲げたり伸ばしたりする際に必要な部位です。

症状は初期段階では違和感や不快感、一瞬の痛みがあります。進行すると指を曲げ伸ばす動きが困難になり、日常生活に支障をきたすこともあります。


手指の腱鞘炎の治療法

1:安静     症状がある場所に負担をかけずに安静に過ごすことが大切です

2:ストレッチ  症状が軽減したら手指を意図的に反対側の手で伸展させることで、

         指の柔軟性、腱の滑走性を保つことが重要です

3:病院での治療 改善が見られない場合は、ステロイド注射を腱鞘内に投与して炎症

          抑えることもあります。並行して、運動療法リハビリにて具体的

          な手指の使い方を指導します

4:手術    1から3の治療で改善が得られない場合、来院時にすでに関節拘縮、

         屈筋腱同士の癒着がある場合は手術が必要になる場合もあります


手指の腱鞘炎の手術方法

実際の手術方法には以下の3つがあります

1.     腱鞘切開術 

o   通常の皮膚を切開して行う手術です

o   局所麻酔を行い、腱鞘の直上の皮膚を数センチ切開します

o   切開した箇所から原因となっている腱鞘を探し、指の両側にある動脈や神経を傷付けないように手術を行います

o   抜糸は10日前後で行われますが、軽度の作業はすぐに行えます

o   費用は症状によって異なり、健康保険の3割負担で2万円前後です

2.     内視鏡手術 

o   内視鏡を使って行う手術です

o   局所麻酔を行い、皮膚を数ミリ切開し、内視鏡の管を挿入します

o   管の中にメスを入れて炎症を起こしている腱鞘を切除します

o   費用は施設によって異なり、健康保険の3割負担で約25000円くらいです。

 施設によっては自費診療で行っているクリニックもあります

o   関節の曲がりにくい方、指の曲げ伸ばしの分離が不自由な方など症状の重度の

 場合は内視鏡による手術は向きません

3.   屈筋腱部分切除術(重症もしくは再発症例の場合)

ばね指がひどくなると、腱鞘だけでなく、腱自体も太くなりさらに動きにく

くなります。それに伴って第二関節の動きも悪くなります

通常の腱鞘切開術では改善しないことがあるため、通常手術とともに

第二関節を曲げる浅指屈筋腱を部分的に切除します

部分的なので、手術後の指の動きには問題ありません

 

終わりに

ばね指の手術は、腱鞘を切開することで多くは改善する手術です。

しかしながら、第2関節に動きの制限がある症例では、腱の癒着による滑走障害や関節拘縮が合併している場合もあるため、基本的な腱鞘切開手術だけでは愁訴が残る場合もあります。

初回の腱鞘切開術を検討する上で、腱の癒着や可動域可動域制限の存在の有無を確認する事が再手術を含めばね指に対する手術成績向上につながります。

手指の動きは、指の伸筋腱、屈筋腱などがそれぞれバランスよく動くことで滑らかに動くため、安易な手術は思わぬ合併症を招く恐れがあります。

患者様の症状に合わせて対応できる、手の構造と機能を熟知した、手外科専門医と治療方針をご相談ください。

 

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