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野球肘(外側型:離断性骨軟骨炎)の実際症例  

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  本日は今後手術予定の患者さんの画像からです。 14歳 男性(中2) 近医のスポーツクリニックで野球肘検診と称して3,4か月に1回経過観察されていたようです。3か月の野球禁止をうけていたが、そのあとは、ドクターの指導内容がどうしたらよいのかわからないため、初発の症状から1年経って当院に来訪いただきました。 関節可動域は良いようです しかしながら、実際のレントゲンでは、以下のような写真となっています。 画像では見事なOCD(離断性骨軟骨炎)です。中央の骨がへこんでいる点が異常なので、中央型となります。外側が欠損する外側型よりは可動域制限などが目立たないので、困らないとドクターに判定されたようです。保存療法を経て、このように外側が修復していき中央だけ残ることもあります。   あまり患者さんは疼痛は言わないことも多いですが、この方は、 「キャッチボールとちょっと遠投するとやっぱり痛いです」「バッテイングは大丈夫です」とのことです。 指導されていたドクターからは、「無理しない範囲で使っていいよ」とのこと、私から「本当に 上手くできているの? 」と聞くとちょっと黙っていました。 野球肘外側型では小学生高学年から中学生ぐらいまでは、OCDと呼ばれる離断性骨軟骨炎での受診率が高いです。実際、整体やスポーツトレーナーの預かりでエコーだけ当てて経過みているチームもいる事実もあります。 今回のドクターはスポーツ医の資格だけの先生ですので 、手術にならないように予防のお話しはしていたようですが、 手肘の専門医、指導医でもありませんでした。 そのため、野球肘の手術適応の基準は知らないようです。 成長期のスポーツ障害は競技によって特徴的なものがあります。野球肘というぐらいですから、本疾患では肘の専門性が高い医師と相談していただければと思います。 (この子の場合、病初期で3か月待っても復帰できない場合は、骨釘移植などで術後4か月から5か月で完全復帰を目指しますし、分離期や遊離期で大きな欠損の場合は、肋骨肋軟骨や膝からのモザイク形成術で術後5から6か月の完全復帰が可能です。患者さんにも、早い段階で適切な治療方針を提示してもらい、家族で選択できる環境が欲しいところです。このご家族のおいては前医からは何も説明されておりませんでした。) 谷野医師勤務 藤井外科胃腸科・整形外科のHP www....

本日の症例から ~肘内側側副靭帯損傷とMRI~ 

肘関節の靭帯縫合術を施行してまいりました。 最近は開業医さんでも MRIを持っている施設も多くなり、靭帯断裂の確定診断にMRIを 用いる先生が多いかと思います。 私も靭帯の損傷程度を把握する上ではMRIが有用だと思いますが、昔ながらの局所麻酔を用いての外反ストレス撮影の所見も重要視しています。 肘の機能として外反した時に円回内筋をはじめとする前腕屈筋群とともにどれだけ支持性が残っているかが実際には重要だからです。 前腕に内出血が出ているなどはまさに屈筋群の損傷を強く疑うサインです。 私自身は前腕屈筋群の内出血は靭帯損傷を疑うサインとして重要であると考えて、 学会の発表と論文発表をしてきましたが、今日の患者さんもまさにその流れです。 もしも受診されている医師からMRI撮影から 「靭帯切れていますが大丈夫でしょう」と言われても何をもって大丈夫なのかが重要です。 大丈夫の根拠が先生の経験だけが頼りでは、その先生が専門医でないなら、、、。どうでしょうか? けがの診断と治療方針の説明は非常に大切です。 患者さんにきちんと伝わるようにお話しするのが大切と思います。  

尺骨神経麻痺による再建手術(肘部管症候群) 腱移行手術後

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本日は以前に手術した肘部管症候群という尺骨神経麻痺でお困りの人の手術の患者さんです 「手指が握りにくい」「物をつまみにくい」「開いたり閉じたりができにくい」といった具体的な不自由を自覚していた方です 外観でわかるようですともう整形外科医と同じ目線ですね。左手の指と指の間が委縮してやせています(何となく指の筋が際立って見えたらすばらしい)。 動画も載せてみましょう。 先ほどの、 「物をつまみにくい」「開いたり閉じたりができにくい」がみえてきます。また、この方は指を伸ばそうとすると鷲の手のような動き方をしていました。これは「 鉤爪用変形 」と呼ばれる典型的なアンバランスな状態です。別の方ですと「どんぶりを持とうとすると、淵に手が当たってしまいます」とお困りでした。 この方には、大変なのですが、神経剥離と腱移行という使いにくくなった状況の指を操り人形の糸を付け替えるような手術(細かすぎますので、ここでは内容を割愛させていただきます)を行いました。尺骨神経の再建術式名を挙げておきますと、Neviaser法とBurkhalter法の併用です。再建法の中で私の得意としている方法の一つです。 手術後の外観と動画を置いておきます。外観が何となくふっくらしてきました。 また、傷もあんまり目立たないかと思います。 次に動画です。 握りも滑らかになりました。つまみ動作もやりやすいとのことです。 この肘部管症候群による尺骨神経麻痺はあまり不自由さが目立たないため(細かな動作が困るのであって、大きく握ったり開いたりには支障がないのです)、ご本人だけで悩んでいる、あきらめている方も多い印象です。 しかしながら、どうぞあきらめないでください。上手く相談していただき良い方法を一緒に考えていただければと思います。 小生も10月から日本手外科学会認定指導医を拝命しております。 手肘のけがでお困りの方には、お役に立てることもあるかと思いますので、 ご相談いただければ幸いです。

中学生の野球肘外側型(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)の術中写真 (骨釘固定術)

昔の画像を整理していて、中学2年生の野球肘の手術中動画が出てきました。 慣れないとわかりにくいのですが、軟骨の色はまあまあなのですが、実は軟骨が傷んでしまっていて、 缶のふたがあいているかのように、 軟骨が 浮いてしまっています。 これが肘の外側が傷んでいる場合の投球障害です。もっと進行してしまうとこの軟骨が剥がれて、関節ねずみ(遊離体)になってしまいます。 そのため、 肘から自らの骨を用いて小さな釘を作り、宮大工のように骨棒を釘として剥がれた軟骨片に打ち込んで、浮いている面を固定して修復を図る手術 をしています。 この手術を骨釘移植術と言います。私自身、この手術方法で多くの患者さんの笑顔を取り返してきました。この子も1か月ぐらいからのリハビリを経て、4カ月で競技復帰を果たしました。 この病態で他院では、 「治るまで待とうね」と言われて、 野球を半年、1年と休止させられている方 、図らずも野球をやめてしまった方もいるかと思います。 この子の場合は、 術後4カ月で復帰、レギュラーに戻ってくれました。 野球だけではありませんが、「早期競技復帰」を求める競技者は多いものです。ただ、待つだけでなく幅広く治療方針を考えてもらえればと思います。 谷野医師勤務 藤井外科胃腸科・整形外科のHP www.tanino-tegeka-seikei.com  

野球肘外側型(上腕骨離断性骨軟骨炎)の治療方針

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先日、使用した講演会での発表スライドを一つ提示しておこうと思います。新聞のインタビューでお答えしたのですが、野球肘の治療の方針にもいろいろな考え方があるかと思います。 私自身は、スライドに提示したような考えを持って患者さんにお話しをしております。 この1枚では限られた内容ではありますが、来院される患者さんのタイミングで治療方針が変わりますが、 患者さんにとってのベストの治療は必ずあります。 選択枝が多いことは悩む方もいらっしゃるかと思いますが、きちんとした専門医での診断、相談をしていただくことを切に願います。